全国若手町村長会 「防災オンライン勉強会」を開催

近年、全国各地で自然災害が頻発・激甚化しており、いざという時に自治体間で助け合える「広域連携」の重要性がますます高まっています。全国若手町村長会においても、有事の際の相互支援を目的とした「災害応援協定」の運用を行うべく、去る3月30日に石川県志賀町にて「災害応援協定の締結式」を行いました。

またこうしたことから、全国若手町村長会に加盟する自治体の町村長・職員を対象とした「防災オンライン勉強会」を2026年4月24日に開催する運びとなりました。 本勉強会では、能登半島地震における現場のリアルな対応状況や、民間企業との新たな協定事例、独自の支援実例など、今後の防災・減災対策のヒントとなる貴重な事例が共有されました。

全国若手町村長会に加盟する自治体の町村長や職員がオンラインで繋がる機会となりました

■ 令和6年能登半島地震~その時現場では~(石川県志賀町 稲岡町長)

まず、石川県志賀町の稲岡健太郎町長より、令和6年1月1日に発生した能登半島地震の凄まじい実態と、その後の復興への取り組みが報告されました。志賀町は、この地震において最初に最大震度7を記録した自治体です。地震は元日の16時10分、多くの人々が親戚一同で正月を過ごしている最中に発生しました。帰省客が非常に多い時期だったため、被災者の中には地元住民だけでなく、遠方から戻っていた親族も多数含まれていました。揺れは約2分間にわたって続く極めて長いもので、体感としても「非常に長く、激しいもの」でした。稲岡町長からは、この地震による被害状況や復旧に向けた取り組みについて、具体的な状況も含めて詳しく共有されました。

そんな中、石川県の「石川県創造的復興プラン」が4月に公表され、その後わずか3ヶ月あまりというスピードで志賀町は「志賀町復興計画」を策定しました。その計画の中心にあるのが、「かえる、志賀町」というスローガンです。

「人が帰る」:町外に避難した方が早期に安心して帰られるようにする

「元に返る」:震災前の正常な暮らしを取り戻し、生業を復活・再生する

「町を変える」:町を元の姿に戻していく中で、持続可能な災害に強い社会基盤を整備するなど、新しい志賀町を創っていく

インフラ面では、道路網の寸断が復旧の最大の障害となりました。稲岡町長は、インフラの復旧に関する厳しい現実を語りました。

■ 奈良県磯城郡の3町で協定を結んだ家屋外装復旧ベンチャーの紹介(いえいろは株式会社 白神康一郎 様)

続いて、屋根や外壁などの外装復旧を専門とする、いえいろは株式会社の白神康一郎代表より、民間の立場からの防災の形が提案されました。同社は既に奈良県内の3町(三宅町、田原本町、川西町)などと防災協定を締結しています。

大規模災害が発生すると、屋根や壁の修理需要は通常の3倍から5倍、時には10倍以上に増加します。地元の工務店だけでは対応しきれないことも珍しくありません。また白神氏は、「一般の人が信頼できる業者を探すのは極めて困難だ」と指摘します。

そんな中いえいろは株式会社では、全国約600社の熟練職人をネットワーク化しています。

  • 厳格な登録基準:自社施工が可能で、7年以上の実務経験がある社員職人が在籍している工事店のみを厳選。
  • 分業体制による効率化:職人は作業に専念し、顧客との調整や説明は事務局が代行することで、高い顧客満足度を実現。

自治体との協定(防災ネットワーク)では、地元のキャパシティを超えた中・大規模災害時にのみ、全国の職人と連携し、修理工事(瓦・外壁の修復等)を担う業者を派遣する仕組みとなっています。 白神氏の試算によれば、石川県輪島市を例とした場合、外部から職人を呼ぶことで一時的な資金流出はあるものの、早期復旧によって得られる経済損失の軽減効果は、その約37倍にも達するといいます。早期復旧は、人口流出の抑制や雇用の維持にも直結する重要な施策です。

■ 八丈島、青ヶ島への寄付金集めなど支援の実例について(東京都利島村 村山村長)

東京都の離島、利島村の村山将人村長は、令和7年10月に発生した台風22号・23号による八丈島・青ヶ島の被害と、その際に行った支援活動について説明しました。台風22号は中心気圧935〜940hPaという猛烈な勢力で八丈島・青ヶ島などを襲いました。瞬間最大風速は70m/sに達し、八丈島では24時間降水量が300mmを超え、避難所が土砂崩れに見舞われるなど甚大な被害が出ました。

利島村自体には大きな被害がなかったため、村山村長は近隣の島々のために何かできないかと考えました。そこで活用されたのが、「全国若手町村長会のLINEグループ」です。村山村長がLINEで相談したところ、即座に「代理寄付(ふるさと納税)による支援」のアドバイスが寄せられました。

そこで村山村長は、被災した八丈町・青ヶ島村に代わって寄付金を受け付ける「代理寄付」を開始しました。

  • 結果:想像以上の反響があり、短い期間でありながらも1,000万円以上の支援金が最終的に集まりました。
  • 課題:一方で、小規模な村役場にとっての事務負担は膨大でした。寄付金控除用の領収書を手書きで作成するなどのキャパシティを超える対応が必要となり、「支援側のオペレーションを事前に想定しておく重要性」を痛感したといいます。

村山村長は、本会の防災協定に関して「誰が何をするか、どこまでやっていいのかの線引きが明確になっていることで、非常時に迷わず動ける。支援したいという『気持ち』を『仕組み』に変えるのがこの協定だ」と語りました。

■ 災害用トイレトラックによる支援対応と、災害応援協定の今後について(長野県御代田町 小園町長)

最後に御代田町の小園拓志町長が、具体的な支援機材である「トイレトラック」に関しての紹介と、全国若手町村長会の「防災応援協定」の将来像について語りました。

御代田町が導入するトイレトラックは、単なる仮設トイレとは一線を画します。

  • 機能:5つの個室を備え、バリアフリー対応(リフト付き)。自走して汚水タンクの処理に行けるため、汲み取り待ちの停滞を防げます。
  • ネットワーク:汲み取りや給水の手配などに関して、参加自治体ともに支援パッケージを構築し、止めない支援を実現しています。
  • 財源:緊急防災・減災事業債や補助金を活用することで、実質的な自治体負担は大幅に抑えられます。また、クラウドファンディングで約900万円を集めた事例も紹介されました。

また、全国若手町村長会の「防災応援協定」の大きなメリットとして、「被災した途端に周囲が動く」体制を強調しました。被災自治体が事務作業に追われることなく、初動対応に専念できる環境を作ることができます。

■ 終わりに

今回の勉強会は、単なる情報の共有にとどまらず、「顔の見える関係」がいかに災害時に機能するかを具体的に示す場となりました。 志賀町の稲岡町長が語った現場の壮絶な現実、白神氏が提案した民間連携による復旧対応、利島村の村山村長が体現した迅速な支援、そして小園町長が示した「仕組み」としての防災協定。これらは全て、全国の若手町村長たちがしっかりと連携し始めている証拠です。

今後も全国若手町村長会では勉強会や合宿等を通じて、地域住民の幸せや持続可能な地域づくりのために、若手町村長同士が共に本音で研鑽し、先の見えない時代の中で世界に開かれた知見やネットワークを活用し、地域の課題解決や活性化に取り組むことを目的に活動を続けていきます。

当日は約30自治体の首長および職員が参加しました(写真は参加者の一部)